株は高く買って、さらに高く売る

株は高く買って、さらに高く売る

株式投資で利益を得るには、2つの王道があると言われています。一つはバリュー株(割安株)投資、もう一つはグロース株(成長株)投資です。

前者は、稼ぎ出す力や保有する資産から計算する企業価値よりも株価が割安になっている企業に投資して、適正な株価に戻ったときに利益を確保する手法です。

後者は、売上や利益の成長率が高く、株価上昇が期待できる企業に投資する手法です。ウィリアム・J・オニールは、グロース株投資で大成功を納め、大化け銘柄を発掘する方法を本書にまとめました。

彼はその冒頭部分でグロース株で利益を確保する秘訣をこう述べています。

「株を買うならその年の高値付近で買うべきであり、価格が下がって安く思えるときに買ってはならない」

 株式投資の基本は「安く売って高く売ること」だと考えている人も多いと思いますが、実は「高く買って、さらに高く売ること」こそ、成功の法則だと指摘しているのです。本書は米国株をベースに書かれていますが、日本株に投資する人にも普遍的な法則として利用できます。

 

 では、具体的な方法を紹介していきましょう。オニールは、長期に上がる株を発掘するための銘柄スクリーニング法「CAN-SLIM(キャンスリム)」を考案しました。これを利用して、莫大な資産を築いたのです。

 この手法がとくに優れている点は3つあります。それは①時を経てもその有効性が保たれていること、②ルールが考案された米国株式市場のみならず世界各国の株式市場で同じように通用すること、さらに③個人投資家向きの投資手法でもあります。

つまり、これから日本株で資産を増やそうと考えている私たちにも有効な手法と言えるのです。

 さっそくCAN-SLIMの具体的な内容をチェックしてみましょう。

C =Current Quarterly Earnings――当期四半期のEPS(一株当たり利益)と売り上げ

A =Annual Earnings Increases――年間の収益増加(大きく成長している銘柄を探す)

N =Newer Companies, New Products, New Management, New Highs Off Properly Formed Bases――新興企業、新製品、新経営陣、正しいベースを抜けて新高値

S =Supply and Demand――株式の需要と供給(重要ポイントで株式需要が高いこと)

L =Leader or Laggard――主導銘柄か停滞銘柄か(あなたの株は?)

I =Institutional Sponsorship――機関投資家による保有

M =Market Direction――株式市場の動向(見極め方)

 これら7つの項目に当てはまる銘柄を選び出せば、長期にわたって株価が上昇を続ける可能性が高いというのですが、これだけではよく理解できません。ポイントをチェックしていきましょう。

「C」では、四半期のEPS(一株当たり利益)と売り上げに着目します。1952年~2001年の間に最も成長した600銘柄を分析すると、四銘柄中三銘柄が目覚ましい株価上昇を始める直前の当期四半期決算発表で平均七〇%以上、EPSが増加していたのです。

 同時に直近の四半期の売上が25%以上増加しているか、あるいは売り上げの増加率が直近3四半期で加速していることが最低条件になります。

 ただし、四半期決算だけでは一時的によい数字になった可能性があります。そこで「A」では、年間EPSが過去3年連続で増加している銘柄を探します。具体的な基準としては25~50%あるいはそれ以上のEPS増加していることが条件となります。

 また、株価が驚くような上昇を見せるには、新しい材料が必要です。それは新商品や新サービスの発表かもしれませんし、経営陣の刷新かもしれません。それが「N」です。

 発行済み株式数もチェックが必要です。株式数が多い銘柄の株価が上昇するには、相当な「買い」が必要です。発行済み株式数が少ない方が株価が上昇しやすいのです。

ただし、これは絶対条件ではなく、CAN-SLIMの条件を満たす銘柄ならば、総資本の規模にかかわらず買ってよいが、資本の少ない小型株のほうが上昇時も下落時も値動きが激しいことを知っておくべきという。

 業界にも目を向けたい。業界内の上位1~3銘柄は、残りの企業がまったく振るわないときでも、信じられないような成長を見せることがあるからです。

 この場合の上位企業とは、規模やブランド力ではなく、四半期EPSの増加率および年間EPSの増加を意味します。また、ROE(株主資本利益率)も最大で、利益率や売上増加率がずば抜けていて、株価の動きも活発な企業のことです。

 さらには、独創性のある優れた製品やサービスを生み出しては、革新的になりきれない古株の競合他社からマーケットシェアを奪い取っていることも特徴です。

 株価を押し上げるには大きな需要(買い)が必要です。株式市場での最大の需要減は投資信託や年金基金、保険会社などの機関投資家です。

 最後の「M」は、銘柄固有のものではなく、株式市場全体の方向性です。市場が下向きのときはどんな銘柄でも下がってしまう可能性が高いからです。ですから、市場が上昇トレンドかどうかを見極めて投資する必要があるのです。

「投資を成功させるたった一つの方法は、市場の平均株価からマーケットの入口と出口を読み取ることである。けっしてマーケットに逆らってはならない。人間はマーケットには到底かなわないのだ」とオニールは指摘しています。

 さて、株価が上昇する可能性の高い銘柄が見つかっても、「いつ買うか」によって、成果は大きく左右されます。オニールは「チャートの読解力を見つけるべき」と推奨しています。買い時を示すチャートパターンは数多くありますが、オニールがとくに着目しているのが「取っ手付きカップ」(カップウイズハンドル)とよばれるものです。カップを横から見たような形をしていることからこう呼ばれています。

このパターンは3~6カ月ほどの期間で形成されるのが一般的だといいます。高値(カップの頂点)から安値(カップの底)の株価調整幅は、一二~一五%から三三%です。

取っ手の部分は1~2週間以上かかって形成されます。そして、取っ手の高値を更新したときが買いのポイントです。

 株価が取っ手付きカップの株価パターンを形成し、その後上向きになって買いポイントまで上昇するときに、一日当たりの出来高は通常に比べて少なくとも四〇~五〇%は増えるはずといいます。それはプロの機関投資家の買いが入った可能性があるからです。個人投資家のほとんどは高値で株を買うことなど怖いしリスクも高い、そのうえバカげているという思いから手を出さないからです。

 成功する可能性が高いタイミングで買うには、株価が「買いポイント」まで上昇するのをじっと待つことを学ぶべきなのです。

■POINT

CAN-SLIMの条件を満たす銘柄をカップの取っ手で買う

■参考文献

オニールの成長株発掘法 【第4版】(パンローリング)

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